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紫の水晶宮(Я18)

つれづれなるまゝに日ぐらし硯(PC)に向ひて心に移り行くよしなしごと(妄想)を、そこはかとなく(だらだらと)書きつくれば、怪しうこそ物狂ほしけれ(私の脳みそはもうだめだ・・・)

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10万HiT御礼『春だから』(前)

『春なのに』(前編)

シズル「なつき、大事な話があるんやけど」
なつき「そうか。それは、大変だな」
シズル「まだ、何ぁんも言うてへんやないの。あんな、驚かんと聞いてな。昨日、うち運動公園のお山に登ったんやけどな」
なつき「お前は・・・人の話は聞かないくせに・・・自分の話はするんだな・・・」
シズル「あ、登ったというよりも、飛んでいったんやけど」
なつき「そんなことは、どうでもいいから・・・さっさと終わらせてくれ」
シズル「頂上に桜の木がありまして、そこで一人お花見しとってん」
なつき「綺麗だったとかいうオチだったら、その桜の樹の下に埋めるからな」
シズル「ちゃいます。お花見しとったら、巨大な宇宙船にぶつけられまして」
なつき「はぁ・・・何かと思ったら、そんな世迷言誰が信じる―」
シズル「『どこ見て運転してはんの!いくらうちが美人やからって、脇見一秒事故一生どすえ!』って叱り飛ばしたら―」
なつき「こいつ!自分のことを美人とか・・・」
シズル「船の中から、ちゃんりんしゃんって言う宇宙人が出てきはってな。声が、アインお姉さまにそっくりで―」
なつき「ちょっと待て。誰だ、アインって」
シズル「せやから、うちのお姉さまどす」
なつき「知ってる前提みたいに言うな!きちんと説明しながら話せ!!」
シズル「そうやね、堪忍。で、うちのお姉さまであるところの―お姉さま言うても血の繋がりやのうて、お部屋係りとそのお姉さまという、特別な師弟関係にあるアインお姉さまに声はそっくりやけど性格は―と言うよりも、立ち振る舞いがまるっきし違う、ちゃんりんしゃんと言ううちに船をぶつけた宇宙人の方に―」
なつき「長い長い。今度は長い!いいから、話の核心に早く触れろ!」
シズル「いくら声が似てるから言うても、ケジメはきっちりつけてもらう言うたらな」
なつき「そうか」
シズル「損傷箇所を治すから言うて、宇宙船に乗せられて」
なつき「へえ」
シズル「気づいた時には、ついててん」
なつき「ふぅん。―って、何が?」
シズル「何がって、それは―」

『春なのに』後編へつづく
「ん―」

夢を見ていた。
あの日の夢。

「起きたのか?」

頭上から降ってくる優しい声―
見上げると彼女が微笑んでいた。

「はい」
「寒くないか?」
「ちぃとも」

自分を包んでくれている温かなものに顔を埋める。
ふわりと広がる彼女の香り。
あの日に着ていたのと同じシャツ―

それで夢を見たんやね。

「なつき―」
「ん?」
「あったかい」

掛けてくれていたシャツのことを言ったのに―
彼女は綺麗に笑って、答えた。

「あぁ、春だからな」



「ええ天気やね」
「そうだな」

春の日差しは温かで―
まるで包み込むような優しさだった。
時折吹く春特有の強い風にはまだ冬の冷たさが残っていることもあるが、それでも確かに生命の息吹を感じさせてくれる。

春休みに入ってすぐの日曜日―
静留となつきは、風華町からバイクを使えば30分ほどの高台にある運動公園に来ていた。

駐車場にバイクを停めて、入り口から遊歩道をちょうど半分ほど歩くと、2人は中央に位置する広場にたどり着いた。
広場のあちこちにはビニールシートが広げられ、家族連れやカップル、中には大人数でバーベキューをしているグループもあった。
そこにいる誰もが、訪れた春を満喫していた。

遊歩道沿いにあるテーブル付のベンチが運良く空いていたので、静留はそこに作ってきた弁当を広げた。
なつきは広場の真ん中、噴水のところにある自動販売機に飲み物を買いに行っている。
静留が弁当を用意し終えて、噴水の方を見遣ると、なつきがゆっくりと戻ってきているところだった。

カットソーの上にさらりと羽織った仕立ての良い白いシャツが、なつきのしなやかな肢体をくっきりと浮かび上がらせていた。
蒼くきらめく独特の色合いを持った絹糸のような黒髪が風に揺れて、きらきらと光がその上で跳ねて―
静留はなんて綺麗な女性(ひと)なんだろう思った。

静留が微笑みかけると、その視線に気づいたなつきは照れくさそうに目を逸らしながら、小走りに戻ってきた。



「随分といっぱい作ったんだな」
「口に合えばええんやけど―」

ベンチに腰掛けながら、なつきは静留の弁当を眺めた。

行楽用の大きな弁当箱の一つはおかずでいっぱいで、もう一つには海苔の巻かれた俵型のおにぎりが詰まっていた。
ささみの間に梅肉と紫蘇を挟んで揚げたもの、うずらの卵の黄色が鮮やかなミートボール、さやいんげんを牛肉で巻いて煮込んだもの。
そして甘くない玉子焼きは中華風味に仕上げて、彩りにわけぎを散らして―
どれもこれまで静留が作ってきた中で、なつきが喜んで食べたものだった。

なつきの笑顔が見たくて、なつきの好きなものばかり入れたから、今更ながらに随分と偏ったおかずだと思って静留は苦笑した。

静留が差し出したおしぼりを、なつきは見もしないでごく自然に受け取って手を拭う―
視線は弁当に釘付けで、どれから手をつけようかと迷う視線が子供みたいでかわいかった。

「ありがとう。いただきます」
「どうぞ。召し上がれ」

箸を割って、まずなつきが手を伸ばしたのは玉子焼き。
自信作ではあったが、やはり『おいしい』という言葉を聞くまでは緊張してしまう―
静留は気付かれないように小さく息を呑んだ。

「ん―うまい」
「ほんまに?嬉しいこと言うてくれはるわぁ」
「お世辞じゃなくて、ほんとにうまい」
「そう?よかった」

なつきが口をもぐもぐと動かしながら笑顔を見せたので、ようやく静留は少し安心することができた。

しかし、緊張が解けてもちっとも食欲は沸かなかった。
なつきの笑顔が見れただけで、十分に満たされていたから。
いつもそんな風に、なつきの前では食べることを忘れてしまう。
だからなつきは静留のことを少食過ぎると心配していて―
本当のことなんて言える訳もないから、静留は自分を叱咤して箸を取った。

「―ほな、うちも頂こうかしら」
「あっ―緑茶と烏龍茶どっちがいい?」
「どっちでもええよ」
「じゃぁ―はい」
「おおきに」

なつきは瞬きの間だけ迷って、緑茶のボトルを渡してくれた―
どちらもお茶には違いないが、自分がより好きな方を覚えていてくれたことが嬉しかった。



食事を進める間―

なつきは終始ごきげんで、普段なら話さないような学園生活のあれこれや、日常に起こった些細な出来事を話してくれた。
取り留めの無い会話だったけれども、なつきが微笑みを見せれば静留も微笑み、それを見てまたなつきも微笑んだ。

ゆったりと流れる時間―

静留は、なつきと今この時を過ごせることに喩えようもない幸せを感じていた。

ふと会話が途切れた瞬間―

突然上がった歓声の方になつきは目を向けた。
静留がなつきの視線を追うと、そこには4、5歳くらいの女の子がいた。
女の子の側には犬がいて、そして父親がいて、母親がいた。
絵に描いたような幸せそうな家族。

父親がフリスビーを投げると、犬がそれを追って走る。
犬は地面に落ちたフリスビーを咥えると、はしゃいでその場を駆け回る。
女の子がそれを追いかけながら、犬を叱ってフリスビーを取り上げようとする。
しばらく女の子と犬はフリスビーを取り合っていたが、急に犬がフリスビーを離したので女の子は後ろに転んでしまった。
父親が慌てて女の子を起こして、汚れてしまった服をはたく。
母親はそんな様子を見て、困ったような顔をしながらも幸せそうに笑っていた。

静留がそっと様子を伺うと、なつきは穏やかな笑顔でそれを眺めていた。
どこか懐かしそうな、慈愛に満ちた表情だった。
けれど、本当にその家族を見ているのかわからなくなる程遠い目をしていた。

(あ、また・・・)

「な、つ―」

気付かないふりをするべきなのか。
それとも踏み込むべきなのか。

なつきが自分に望むのはどちらなのだろうか―

静留が躊躇っている内に、すうっとなつきの表情から色が失われていった。

瞳の中に、憂いと哀しみが見え隠れする―

最近、なつきはよくこんな表情をするようになった。



まだ学校が春休みに入る前―

なつきがバイクを隠している裏山から、2人はちらほらと咲き始めた学園の桜を眺めていた。
薄く霞む景色を見ながら、静留が独り言のように言った。

「桜―すぐに満開になるんやろね」
「あぁ。そうだな」
「なぁ、お花見―行かへん?」
「花見?」
「そう。お弁当持って。運動公園の桜が綺麗なんやって―」

色よい返事は、期待していなかった。
綺麗なものを見る時、なつきの表情はどことなく淋しそうに見える。
出会った時もそうだった。
だから、きっと断わられるに違いない。

そんな風に思っていたから―
静留はなつきの返事に、自分の耳を疑った。

「いいぞ」
「え?」
「いいって言ったんだ。バイクで迎えにいくから―」
「・・・・・・」

いつまでも惚けたように黙っている静留に、訝しげな表情を浮かべながらなつきは尋ねた。

「どうした?」
「いえ。なんでもありまへん。なら、うちはお弁当作りますな」

どうして誘いにのったのか分からない。
もやもやと心にひっかかるものを感じて、静留は戸惑っていた。
けれども、せっかくの機会をふいにはできないから―
静留は懸命に笑顔を作ると、平静を装って話しを進めた。

「お願いしていいのか?」
「ん。その代わり、飲み物はなつきのおごりな」
「構わないぞ」
「楽しみやなぁ」
「あぁ」

静留がそう言って微笑むと、なつきもまた笑顔を返してくれた。
その笑顔のまま、なつきは学園の桜に目を向ける。

ここのところなつきは何か思いつめたような顔をしていて、笑顔を見せることはほとんどなかった。
何か起こったのかもしれない。
そう思って密かに心配していたが、今日は笑顔を見せてくれた。

杞憂に過ぎなかったのかも―
いや、そうであって欲しい。

これが逃れられない運命だとしても、うちが全部背負うから。

あなたには―

笑っていて欲しい。

そう願う静留の眼の前で、なつきの横顔からふっと笑みが消えた。
  1. 2008/05/10(土) 18:33:26|
  2. 春だから(舞-HiME SS)
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ここは舞-(乙)HiMEの静留(シズル)・なつき(ナツキ)・奈緒(ナオ)への愛をこじらせるファンサイトです。版権元とは一切関係御座いません。勝手ながらR18とさせて頂いておりますので、18歳以上の分別のある大きなお友達だけ遊びにいらしてください。百合の花が仰山咲いておりますので、閲覧は自己責任でお願いします。 当サイトの全ての画像及び文章等の無断転載・引用はご遠慮下さい。

プロフィール

長澤 侑

Author:長澤 侑
性別:ネコ
属性:ヘタレな王子
特徴:ビタミンShizuru分が足りなく
    なるとヘタレる
持病:静留病
    (英名:シズル・シンドローム)
尊敬する人:
ヘタレの星玖我なつき
ヘタレ学園長ナツキ・クルーガー

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